自然のものは自然のままに

こげらは朝まで元気で、ピョンピョンはねて小さなケージの中であっちこっちに動いていた。腫れているように見えたどうか元気で右目も、今朝はちゃんと開いていて、幾分調子が良さそうだった。所属長の許可を得て朝は少々遅刻することにして、朝いちばんで獣医さんへ向かった。野鳥拠点と教えられた獣医さんは、覚悟はしていたもののかなり不機嫌で、「別に拠点なんていう決まりはないんだけど」としょっぱなから言われてしまった。怖いよ~と思いながらも、色々と聞いてみた。獣医さんにしてみれば「気軽に持ち込まれても困る」っていう部分もあるんだろうけどね。
コゲラは割とちょこまか動き回っているものの、ちゃんと飛べるわけでは無く、相方の腕をよじ登ったりしていた。
その医者いわく「栄養状態8割。激突して怪我したようには見えず、羽も大丈夫。胃には何も無いようなので、強制給餌をして抗生剤を打っておきます」とのことだった。そして「出来ればこのまますぐに発見した場所に近い林に放鳥してください」と言った。
・・・・・
仮にちゃんと飛べなくてもコゲラは啄木鳥の仲間だから、えさの虫を取れれば良いのだから、、と諭された。野鳥はヒトの手を介することで衰弱するから、とも。
逡巡して悩んだ結果、職場の裏山に放した。足に引っかかりの良い木を見つけて上へ上へと上って行き、数回下に落ちた。それでも根性で木に登りそのまま上へ向かっていった。泣きそうになる気持ちを抑えて、そのままリリースした。
仕事が終わった後、その場所に行ったら、もうコゲラはそこに居なかった。気配もなかった。
どうか、どうか元気で。その可愛い体で木の幹をコンコンつついて虫を沢山食べて元気になっておくれ。
・・・
仕事場にすぐに向かったものの、しばらく呆けてしまった。

Leave a comment

Your comment